施工管理2026-08-04監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

管工事施工管理技士のキャリアと年収 ― 水道・ガス配管を担う国家資格

この記事の要点

「電気工事士は知ってるけど、水道やガスの配管を管理する資格って何ですか」——この半年で三度、面談の場で同じ質問を受けました。

結論から言うと、それは「管工事施工管理技士」という国家資格です。水道・下水道・ガス・空調配管といった「管工事」全体の施工を統括する立場で、電気工事施工管理技士や土木施工管理技士と並ぶ、施工管理技士7種目のひとつに数えられます。老朽化した水道・ガス管の更新工事が全国で動き出している今、この資格を持つ人材の需要は少しずつ、しかし確実に高まっていると僕は感じています。今日は、この資格の仕組みとキャリアの広げ方を、失敗しやすいポイントも含めてできるだけ具体的にお話ししたいと思います。

0. 「配管の現場って、誰が管理してるんですか」という疑問から

現場で配管を通す作業自体は配管工が担いますが、その工程全体の計画・安全管理・品質管理・発注者との調整を担うのが施工管理技士です。管工事の現場では、水道管・ガス管・空調用の冷温水管・排水管など扱う対象が広く、しかも地中に埋まっている部分が多いため、電気工事や建築工事と違って「掘ってみたら想定と違う」という事態が頻繁に起きます。僕が過去に同行させてもらった水道管更新工事の現場見学でも、既存図面と実際の埋設位置が数十センチずれていて、その場で施工計画を組み直す場面を見たことがありました。この対応力を制度として担保するための国家資格が、管工事施工管理技士だと理解しておくとわかりやすいと思います。

1. 資格の位置づけと受験資格 ― 1級・2級で何が変わるか

建設業法上、施工管理技士は土木・建築・電気工事・管・造園・建設機械・電気通信工事の7種目に分かれ、管工事施工管理技士はそのうち「管工事業」の主任技術者・監理技術者になるために必要な資格です。試験は一般財団法人全国建設研修センターが実施しており、第一次検定(学科)と第二次検定(実地)に分かれます。合格率は年度によって変動しますが、僕が把握している範囲で言うと、第一次検定はおおむね5〜6割、第二次検定を含めた最終的な合格率は3〜4割程度という年度が多く、電気工事施工管理技士とほぼ近い難易度感だと体感しています。ここはあくまで目安として捉えてください。

区分主な受験資格の目安担える立場対象工事規模
2級指定学科卒で実務経験1年半〜3年程度主任技術者下請契約額が一定額未満の工事など
1級2級合格後の実務経験、または指定学科卒で実務経験3〜5年程度監理技術者・主任技術者大規模工事・元請の下請契約額が大きい工事

特に1級を持っていると、大規模な水道・ガス更新工事で元請の監理技術者として配置できるため、企業側からの評価が一段階上がる印象があります。逆に2級だけの場合は「小規模工事の主任技術者」という位置づけになりやすく、任される工事の規模に差が出てくるのが実情です。

2. どんな現場で働くのか ― 水道・ガス・空調配管の三本柱

管工事施工管理技士が活躍する現場は、大きく三つに分けられます。ひとつは上水道の配水管・給水管の新設・更新工事、もうひとつは都市ガスの内管・供給管の敷設や更新工事、そしてビル設備の冷温水配管・冷媒管などの空調配管工事です。以前、水道管路の更新工事を管理していた方に話を聞いたとき、深夜の断水作業に合わせて工程を組む大変さを語ってくれたことがありました。住民生活への影響を最小限にするため、作業時間帯や断水範囲を細かく区切り、複数班の動きを同時に管理する。地上の工事とは違う緊張感がそこにはあります。ガス工事の現場では、既存記事でも触れている「保安」の視点(漏えい防止・供給停止時の安全確保)と、施工管理としての工程・品質管理の視点の両方が求められる場面が多く、両方の知識を持つ人材は現場で頼られやすいという印象を持っています。空調配管の現場は水道・ガスに比べると地中作業が少ない分、工程の読みやすさはありますが、ビル入居者への配慮や他業種(電気・内装)との工程調整が難しく、これもまた別種の難しさがあります。

3. 年収の実態 ― 電気工事施工管理技士・土木施工管理技士との比較

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の職業小分類「配管工」の公表値を見ると、配管工の年間の平均的な収入水準はおおむね400万円台前半とされています。ただしこれは配管作業を担う職人の数値であり、施工管理技士として資格を持ち管理業務に就いている場合はこれより高くなる傾向があります。僕が転職支援の現場で見聞きする体感値としては、管工事施工管理技士の年収レンジは400万円台後半〜600万円台前半あたりが中心で、1級を保有し監理技術者として大規模工事を任されている場合は700万円台に届くケースもあります。電気工事施工管理技士と比べると、体感としては大差なく、むしろ人手不足感が強い分、管工事の方がやや高めに出る現場も見られます。土木施工管理技士は工事規模が大きくなりやすい分、平均としてはやや高めに見えることが多いですが、これも会社規模や元請・下請の違いによって上下する要素が大きく、資格の種別単体で優劣がつくものではないと考えています。

資格年収レンジの目安(体感値)備考
管工事施工管理技士400万円台後半〜600万円台前半1級・監理技術者で700万円台も
電気工事施工管理技士450万円台〜620万円程度大手電力系元請でやや高め
土木施工管理技士450万円台〜650万円程度公共土木の大規模案件で上振れ

4. キャリアパスの分岐点 ― 施工管理を続けるか、保安・設計へ広げるか

管工事施工管理技士を取得したあとのキャリアは、大きく三方向に分かれると僕は見ています。ひとつは設備会社やゼネコンの中で施工管理職として経験を積み、1級取得後に監理技術者としてより大きな工事を任される道。もうひとつは、独立して管工事業の建設業許可を取得し、自分の会社として工事を請け負う道です。地域の水道・ガス設備更新工事は今後も一定量発生していくと見られており、地場の管工事業者としてのニーズは根強いと感じています。三つ目は、給水装置工事主任技術者やガス主任技術者といった保安・設計側の資格を組み合わせ、施工管理と保安・設計の両方を理解する人材として幅を広げる道です。この三つ目のルートを選ぶ人は、僕の周りでは決して多くありませんが、水道・ガス両方の現場を知っているという強みは、転職市場でも珍しがられる傾向があります。

5. 現場でよくつまずくポイントと、その対処

5-1. 「図面通りに進まない」ことへの心構え不足

異業種から入ってきた方が最初に戸惑うのは、地中埋設物の位置が図面とずれているという前提そのものに慣れていない点です。以前、電気設備の施工管理から管工事に転じた方が「電気は基本、配線図の通りに進む。でも配管は掘ってみるまで分からない部分がある」と話していたのが印象に残っています。対処としては、着工前に既存埋設物の試掘調査を計画に組み込み、想定外が出た場合の工程バッファ(僕の体感で1〜2日程度)を最初から確保しておくことが有効だと感じています。

5-2. 住民・入居者対応の負荷を見誤る

水道の断水作業やガスの供給停止を伴う工事では、住民への事前告知・当日対応が発生します。この調整業務を「施工管理の本業ではない」と軽視して後回しにし、直前になって対応が回らなくなるケースを何度か見てきました。工程表に住民対応の時間を明示的に組み込み、告知文の準備・配布を着工の1〜2週間前に前倒しで終える運用にしている現場は、当日のトラブルが少ない傾向があると感じています。

5-3. 保安の視点が抜けたまま管理してしまう

ガス工事では、施工管理としての工程・品質管理だけでなく、漏えい防止や供給停止時の安全確保という保安の視点が欠かせません。この視点が薄いまま管理を進めると、検査段階で手直しが発生し、結果的に工程全体が遅れるという事例を見てきました。ガス主任技術者など保安側の資格者と早い段階から連携する体制を組んでおくことが、遅延を防ぐ現実的な対処法だと考えています。

6. 未経験・異業種から目指す場合の進め方(所要期間の目安つき)

異業種から管工事施工管理技士を目指す場合、いきなり資格取得を目標に置くのではなく、まず配管工事の現場に実務経験者として入り、2級の受験資格である実務経験年数を積むところから逆算して考える必要があります。具体的な進め方と、僕の体感でのおおよその所要期間は次のようになることが多いです。

  1. 設備会社や配管工事会社に、施工管理職候補または現場スタッフとして入社する(即時)。
  2. 現場で実務経験を積みながら、2級管工事施工管理技士の受験資格(実務経験年数)を満たす(指定学科卒でおおむね1年半〜3年程度)。
  3. 2級を取得し、主任技術者として小規模工事の管理を経験する(合格発表から半年〜1年程度で現場配置される例が多い印象です)。
  4. 実務経験を積み1級を取得し、監理技術者として大規模工事を任される立場を目指す(2級取得後さらに3〜5年程度が目安)。

電気工事士や設備関連の実務経験がある方であれば、配管の基礎知識に馴染みがある分、このルートを比較的スムーズに進めるケースが多いと感じています。一方で完全な異業種からの場合は、まず現場作業員としての経験を1〜2年積んでから施工管理側に回るという段階を踏む方が、結果的に無理なく資格取得までたどり着けると僕は考えています。トータルで見ると、完全未経験から1級取得・監理技術者として活躍するまでは、おおむね6〜8年程度を見込んでおくのが現実的な体感値です。

7. (結論) 知名度は低いが、需要は静かに高まっている資格

管工事施工管理技士は、電気工事施工管理技士ほど名前が知られているわけではありませんが、水道・ガスという生活インフラの更新工事が続く限り、需要がなくなることはないと考えています。年収面で電気工事施工管理技士を大きく上回るわけではありませんが、地場の水道・ガス工事に携わりたい方や、施工管理と保安・設計の両方を理解する人材としてキャリアを広げたい方にとっては、着実に選択肢になる資格だと思います。皆さんいかがでしたでしょうか。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 管工事施工管理技士とはどんな資格ですか?

水道・下水道・ガス・空調配管などの「管工事」を対象とする施工管理技士の国家資格です。建設業法上の施工管理技士7種目の一つで、工事現場の主任技術者・監理技術者として、工程管理・安全管理・品質管理・発注者との調整を担います。配管そのものの作業は配管工が行い、施工管理技士はその工程全体を統括する立場になります。

Q. 未経験でも管工事施工管理技士を目指せますか?

未経験からいきなり資格を取ることはできませんが、指定学科卒であれば実務経験1年半程度から2級の受験資格を得られるため、配管工や設備会社の現場スタッフとして実務経験を積みながら2級を取得し、その後1級へステップアップする道が現実的です。異業種から入る場合は、まず現場での実務経験を積むところから逆算して考える必要があります。体感では完全未経験から1級・監理技術者を目指す場合、6〜8年程度を見込んでおくのが現実的です。

Q. 電気工事施工管理技士と比べて年収は高いですか?

体感値としては大差なく、むしろ人手不足感の強さから管工事の方がやや高めに出る現場も見られます。ただし年収は資格の種別より、1級か2級か、監理技術者として大規模工事を任されているかどうかの影響が大きく、資格の違い単体で優劣をつけられるものではないと考えています。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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